昨日までソウルでした。
いやあ…とてもギラギラ暑かったです!
ちょっと気になるエリアがあり
早起きして出掛けてみました。
古い街並みが残る北村という場所ですが
再開発が進むのと同時に
その古い建物を保存する動きが遅かったのとで
どれくらいな状態が見てみたかったのです。
結果は、微妙に残念でした。
なんとか残ってはいても、形やデザインはそのままで
新しい素材で改装され、おまけにセコムやなんや
セキュリティのしっかりした門ばかりに…
時間がなくて、一部分しか歩けませんでしたが
もっと奥の方に、路地の間に、
実は古い佇まいは潜んでいるのでは…と思っています。
次回、再探索に行ってみます。
そして移動中に見かけた南大門。
グレーのパネルで囲われて…哀しい姿です。
古いもの、歴史あるもの、って
簡単に存在できるものではないのに、
なぜ壊したり、
ましてや燃やしたり…なんてしまうのでしょう。
北村を歩いていても
「この辺に、古い家が残っていませんか?」
と聞いたら、ほとんどの人に
「古いから壊してないよ。80年以上経ってるんだから」
というような返事でした。
本当の韓国らしい建物は
もはや地方にしかないのかもしれません…
いやいや…地道に歩いてみよう。
そういえば、あの「冬ソナ」のユジンの家も
北村エリアにあり、その戸建の家も壊されたようです。
日本語上手なオバサマが教えてくれました。
「階段は残ってるから写真撮る? 案内する?」
と、しつこかったですね…
日本人すべてが
ユジンの家を見に来ているわけではないので…
この「料亭旅館魚信」は、
室内の意匠が凝っていて、1日中でも眺めていられます。
泊まった部屋は2階の「須磨」です。
壁から天井まで、非常に細やかな細工がされています。
いろんな種類の木材を使っているので
素材の表情が楽しめ、面白いです。
ガラスに、円を描くように風景を切り取るようなデザインの、
なんとも贅沢な額入り障子は見事。
一つの部屋だけでも、十分、見応えあり。
他の部屋や廊下、階段…
一つとして同じものがない、こだわりようです。
ここは、
一人の大工さんが、コツコツと作った旅館らしいです。
その熱い想いが、ここまでの空間にしたのでしょう。
かつては、
理解あるオーナーも多かったのかもしれません。
今では考えられませんが、
そのお陰で、
築100年以上も生き続けているのでしょうね。
素晴らしい空間は、時間を忘れます。
古い木造の旅館が好きです。
できれば小規模で、
昔のままの状態で、丁寧に使い続けている旅館がいい。
変に改装して、外観はそのままだけど
内装が新しくなっているのは、ちょっと違うのです。
時が経ったものを、そのまま維持するのは大変です。
想いがなければ、なかなか続かないこと。
そういった長年の愛情が空間に溶け込み、
それが心地よさに、つながっているのだと思っています。
ふと行きたくなる旅館があります。
その一つが、広島県尾道市にある「料亭旅館魚信」。
ここでは何も考えず、時間を忘れて過ごすことができます。
道に面している佇まいに魅かれました。
威張り過ぎない、
自分の家に帰ってきたかのような玄関。
それでいて、そこまでの短いアプローチには
キモチがフワッと包まれるような空気感があります。
小さな、ちょっとした空間ですが大切な場所。
部屋に入ると海の音が静かに聞こえてきます。
広島ならではの素材を活かした料理と
女将さん手づくりの梅酒で、
時間とは関係のない流れの中に入り込んでいます。
過剰なサービスは不要、自然にこぼれる笑顔で十分。
はじめて会ったとは思えない、温かい女将さんと話をして
高揚した想いのまま、また自分の世界に入ります。
遠くの方で、微かに波を感じながら
そのまま眠れる、至福の時。
何だか思い出すと、また行きたくなってきました。
旧乃木邸の室内。
当時のまま、見事に保存されています。
靴を脱いでスリッパに履き替え
自由に、見学や撮影ができました。
多少、家具の位置はズレている気がしましたが
雰囲気が損なわれるほどではないので
よしとしましょう。
理想は、実際に使われていた状態で
部屋の空気感が伝わってくるような展示ですけどね。
全体的に室内は、コンクリートの無機質な壁面に
木製の床や建具がアクセントになって
ちょっと温かみあるモダンなインテリアでした。
木で組んだ天井も、シンプルなのに
何気ないスクエアなデザインが効いています。
各部屋に大きくとられた、
この家のために作っただろう窓も
外の風景を切り取るように
木々を美しく見せてくれています。
いい具合に植物も成長してくれていて
この現状を見たら、さぞや喜ばれたことでしょう。
窓枠や桟、カーテンレールにも
こだわりが現れており、ちょっと感動。
ドアノブやスイッチ、照明、手動の消火器なども、
当時のままきれいに残っていて
とても見応えがあり、とっても満足でした。
小さなモノや金具類にこだわっている物件は
やっぱり全体の印象が高まります。
そういう小さなことの積み重ね、ですね。
また、悪趣味な贅沢さは一切なく
本当に好きなものに囲まれて過ごしていた日々が
豊かなキモチにさせてくれました。
エアコンもなく、昔日に蘇った気分で見学でき、
10年も出掛けることなく
あたためたかいがありました!
港区に事務所を構えるようになって10年以上。
その間に、期間限定で公開される建物などを見たい!
と、思いつつも、
「いつでも行ける」とも思いつつ、多々逃したまま。
その一つが、
毎年9月12日、13日に公開される旧乃木邸。
明治天皇大葬の日である9月13日に
夫婦で殉死したので、この日に公開されているようです。
興味深かったのは、自ら設計したという点。
ドイツ留学中に見た、フランス軍隊の建物をヒントに
明治35年に建てられたようです。
今見ても、なかなかモダンな佇まい。
特に、裏側から見ると、
地下が石造り、1、2階が木造という組み合わせに。
この高低差のある地形や
周囲の木々と響き合っています。
個々が捉えた洋を、ほのかに感じさせる日本の近代建築。
こういう建物に、とても魅かれます。
この前のDAIRYで書いた、
秋田の赤れんが郷土館に増築されたビルに、
勝平得之記念館も入っており、ついでに行ってみました。
なぜ「ついで」かというと、誰かが描いた平面作品には
正直、あまり興味がないからです。
古く、街に佇む名もない建築は気になりますが、
美術館には、それに勝るような魅力をあまり感じません。
それより博物館や植物園、
日常の街並みの方が好きです。
そこは、何だか公民館のような雰囲気。
とりあえず観よう気分で行っている私でしたが
それに反して、ちょっと身震いがしました。
勝平得之−かつひらとくし。
この人の想いの深さが作品から匂ってくるようで
何だか引き込まれて動けませんでした。
秋田の地を愛し、版画への一途な想いが強いのです。
いつ以来でしょうか…
こんな風にガラスの向こうの作品に、時を超えて
体温を感じるようなものがこみ上げて来たのは…
また、同時開催で、彼が収集していた版画の中から
美人画のみの展示もしていました。
有名や名作とかではなく、その人の視点で集まったものは
やはり何か納得ができるものばかりでした。
何でしょう、この濃さは。
そんな勝平得之の版画作品は、
日本を訪れたドイツの建築家、ブルーノ・タウトによって
世界に紹介され、
ケルン美術館にも多く収蔵されています。
タウトの秋田滞在時、勝平得之が案内をしたのが縁。
そういえば以前、群馬県高崎市の少林山にある、
タウトが過ごした家を見に行ったことがあります。
その空間を思い出し、
お互いが魅かれる理由が分かるような気がしました。
言葉がなくても通じ合える、同じ方向性の感性。
そんなかつての瞬間を感じられたようでした。
出張に行くたび、時間があれば覗いているのが
その地に残る近代建築です。
日本の土地に、日本の素材で建てられた洋風の建物に
時おり感じる和洋折衷の穏やかな空気感。
ヨーロッパに建つ古い建物と違った、
郷愁を誘う何とも言えない、心地よさに魅かれるのです。
理由もなく、そこに居たいと思ってしまう何か。
できることなら建物内に
時間を気にせず、気がすむまで、たった一人で居たい。
やっぱり建物自体というより、
その内側に残る当時の照明や床材、
あるいは家具類が佇む空間が気になるのです。
先月、秋田からの帰りの飛行機までに時間あり、
ホテルの近くにあった、赤レンガ郷土館に行ってみました。
ここは、旧秋田銀行本店本館。
元銀行で、
その後、活用されている建物は多々ありますが、
実際は、その残し方が間違っていて
残念な姿になってしまっていることも多々あります。
なので、中に入るまでは、いつもドキドキするものです。
でも、ここは大丈夫でした!
寄木張りの床や柿渋で染めた贅沢な壁のクロス、
ヒーターやスイッチ類、窓の金具なども残り、
きれいに、かといって余計な手を加えすぎないでいて
とても当時を思わせる、いい状態でした。
ただ、1階の説明パネルは解説のためとはいえ、
折角の雰囲気を邪魔する感じがしました。
いつも思いますが、こういうのはパンフレットに書いてあり
読みたい人は読み、空間を感じたい人のためには
大げさなパネル展示は止めて欲しいな・・・と。
ここでは珍しく、私は外観が一番、気になりました。
グレーの男鹿石と白タイル、赤レンガを上手く組み合わせ、
随所に魅せるレリーフや柵のデザイン、
とっても斬新で新鮮。
一つ一つが細やかで、きっと当時の職人さんも
仕事のしがいがあったことでしょう。
私が出掛けた時には雨が降っており、
その素材たちの色が一層、濃く、深く、感じられました。
雨で、よかったかもしれません。
多少、周囲の建物は相容れない雰囲気ですが
ここだけを眺めている限りでは、幸せな時間でした。
目黒雅叙園の百段階段を観に行ってきました。
ここは、国の登録有形文化財で昭和10年の建物。
繊細な細工と贅を尽くした空間は、
当時の多くの職人さんたちの息吹を感じます。
中でも、星光の間が好きですね。
季節の野菜と魚などが描かれていて
その組み合わせといいバランスといい絶妙。
よく見ていると、ちょっと面白い感じです。
また、どの部屋にもある窓ガラスもいい。
完璧でない技術で作られたガラスが現存していて
外の景色も、時代を遡って眺められる気分。
ただ残念なのは、巨大なエアコン。
もっと何とかできなかったものかと
残念で仕方がない。
折角の美しい空間が哀しく見えてしまう。
今は、ちょうど黒澤明展をやっていましたが
普段は、食事とセットで観れるようです。
→東京タイムクルージング「美と匠の祭典」
1階奥のトイレも、是非、覗いてみて下さい。
館内ガイドには、再現と書かれていますが、
ちょっと楽しい気分になりますよ。